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前回は暗い内容で申し訳ないです><
あれから前向きに努力しようと心に決めて頑張っています。
さて、今回は新作、「茜色の夕焼け」を載せたいと思います。
何分、執筆に取れる時間があまりなく、誤字脱字等確認もあまりできていません。
もし、発見されましたら、○○が違ってるよ。とか、気軽に教えていただければ幸いです。
例のごとく無断転載はお断りします。
今回は完全オリジナル(まぁジャンルがジャンルなだけに似たような作品もあるかと思いますが)なので、一切の権利は管理者の私にあります。
転載等(ナイトオモウケド)発見された場合もご報告くださると幸いです。
さてさて、本編ですが。
学園ラヴコメ、といっておきながら学園外の話も多分にありますのでご了承下さい。
以下、作品を読むに当たっての留意事項と注意事項。
1.桃色要素が多分に含まれています。桃色要素に対する免疫のない方、桃色に染まりたくない方はお気をつけ下さい。
2.ここで言う桃色要素=キュン、またはドキッと来る仕草、台詞、態度のことです
3.期待しないで下さい(苦笑)
4.小説関連のコメントは基本全て非公開としますのでお気軽にどうぞ。
5.コメントの有無で作者の執筆モチベーションが変化します=====○)д`);.・;゛;ブッ
6.あくまで趣味の小説なので混沌です。
7.そろそろだるいので本編へ。
8.登場キャラの男女各1名づつ未だ名前が未定なので思いついたのあったらこんなのどお?どかコメントしていただくと嬉しいです。もしかしたら登場するかもしれません。
9.ぶっちゃけ、感想をお待ちしてます(´゚ω゚)ブッ.・+;゚*;・.*゚
以上留意事項でした。
本編です。
とても長い作品になります。
※まだ桃色要素はありません.
とりあえず今回載せる冒頭の部分だけでSoul Reparationの4分の3ぐらいあります。
かき終わるのはいつになるやらorz
では、長くなりましたが続きからどうぞ。
あれから前向きに努力しようと心に決めて頑張っています。
さて、今回は新作、「茜色の夕焼け」を載せたいと思います。
何分、執筆に取れる時間があまりなく、誤字脱字等確認もあまりできていません。
もし、発見されましたら、○○が違ってるよ。とか、気軽に教えていただければ幸いです。
例のごとく無断転載はお断りします。
今回は完全オリジナル(まぁジャンルがジャンルなだけに似たような作品もあるかと思いますが)なので、一切の権利は管理者の私にあります。
転載等(ナイトオモウケド)発見された場合もご報告くださると幸いです。
さてさて、本編ですが。
学園ラヴコメ、といっておきながら学園外の話も多分にありますのでご了承下さい。
以下、作品を読むに当たっての留意事項と注意事項。
1.桃色要素が多分に含まれています。桃色要素に対する免疫のない方、桃色に染まりたくない方はお気をつけ下さい。
2.ここで言う桃色要素=キュン、またはドキッと来る仕草、台詞、態度のことです
3.期待しないで下さい(苦笑)
4.小説関連のコメントは基本全て非公開としますのでお気軽にどうぞ。
5.コメントの有無で作者の執筆モチベーションが変化します=====○)д`);.・;゛;ブッ
6.あくまで趣味の小説なので混沌です。
7.そろそろだるいので本編へ。
8.登場キャラの男女各1名づつ未だ名前が未定なので思いついたのあったらこんなのどお?どかコメントしていただくと嬉しいです。もしかしたら登場するかもしれません。
9.ぶっちゃけ、感想をお待ちしてます(´゚ω゚)ブッ.・+;゚*;・.*゚
以上留意事項でした。
本編です。
とても長い作品になります。
※まだ桃色要素はありません.
とりあえず今回載せる冒頭の部分だけでSoul Reparationの4分の3ぐらいあります。
かき終わるのはいつになるやらorz
では、長くなりましたが続きからどうぞ。
――「始業式の一日」――
朝。小鳥が囀る清々しい気分をぶち壊す目覚まし時計のけたたましい音で目を覚ました俺、藤間一貴(とうまいつき)は休み中に身体に染み付いてしまった怠惰な生活の影響をさんさんと受けた新学期に相応しくない表情のまま朝食を摂り、学校へ向かうため玄関のドアを開ける。外には幼馴染の吉崎美月(よしざきみづき)がまさに春!まさに朝!という清々しく、且つ、世間一般的な男性から見れば愛くるしいといえる笑顔で、
「いっちゃん、おはよ!今日から新学期だね!」
と声高らかに手を振っている。なので俺はだらけの抜けない声で、
「おーう。」
と、片手を上げて返す。美月とは小学校時代からの腐れ縁というやつである。付き合いだけは長いものの未だ時折発生する予測不可能な思考には慣れる事ができない。まぁ時折喋り方が変わったりするがそれはもうごく自然に捉えることができるようになった。
「ねぇねぇ、私変わったの分かった?」
と、突然何の脈絡も無い質問をぶつけられるのだから此方としては心労が増すばかりである。しかし、言われて見れば、自然すぎて全く気付かなかったが背中にかかるほどあった髪が肩に届くかどうかという長さにまでカットされていた。
「髪切ったのか?」
「よく気付いたね!さすがいっちゃんだわ。どお?似合ってるかな?」
似合ってるか似合ってないか、と、問われれば、似合っているだろう。爛々と太陽のように輝く大きな瞳に、整った鼻筋、プックリとした形の良い唇、切った事で印象が変わる僅かに茶色が入った髪。客観的に見てもかなりモテる。そう、あくまで客観的に、だ。決して俺の主観ではない。・・・・・まぁ少々ドキッとしてしまったのは事実だが。さすが、今年二月時点で告白してきた男が百人を超えただけのことはある。と、同時に百人斬りも達成しているが。
「似合ってると思うぞ。」
「やだ、もう、いっちゃんてば!」
バシ!と、背中を、叩かれる。いや、すまん、訂正だ。ドゴ!と背中に裏拳が入る。うぐっ、と呻く俺などそっちのけで美月は髪の先をくるくると楽しそうにいじり出す。さすが、父親が武術家なだけはある。思い返せば小学校時代も技の練習台にされ続け、泣いていた様な思い出がある。じんわりと過去を振り返ってみるものの、なんだか絶対思い出してはならない事があったような寒気を感じてしまったのでやめておこう。とまぁ、高校で美術部に所属しながら、戦闘能力だけは上昇の一途を辿る幼馴染と学校へ向かうことにしよう。
「クラス替えでどんな人と一緒になるかなぁ?楽しみだね!」
朝からまぁ元気だなぁ、と思いつつ、
「期待してはいるっちゃいるけどな。それよりも、だ。俺には睡眠欲の方が大きい。」
はぁ、とため息をつく。
「相変わらず、眠たそうだもんねぇ。」
そんな風に笑顔で力強く言われると哀しくなってくる。と、感傷に浸っていると桜の花びらが一枚ひらひらと舞い、頬を掠めた。
「うお、桜すげ!」
と、美月が声を上げる。声につられ見上げてみると、桜並木の満開の桜が目に飛び込んできた。舞い散る桜吹雪は映画のワンシーンさながらというほど印象的な美しさがあった。そのまま桜を見ながら歩いていく。春とはいえまだ朝は冷える。でもそんな肌寒さが妙に心地いい。思わず目も覚める。これから一体どんな出会いがあるのだろうか。どんな出来事があるだろうか。高まる期待を胸に、学校の正門をくぐる。
クラス替え前の独特の雰囲気漂う教室では、あちらこちらでクラス替えについて話し合う声が聞こえる。
「いよっす、相変わらず眠そうな顔してんな一貴は。」
そう言って話しかけてきたのは一貴の友人の山本浩二(やまもとこうじ)。
「お前も相変わらず馬鹿そうな顔してるな。」
「どんな顔だよそれ!」
むぅっとしている山本は無視して席に着く。と、
「おはよう、一貴君。久しぶりだね〜。」
相馬義人(そうまよしひと)が相変わらずののほほんとした口調でやってきた。ちなみに、山本は馬鹿であほでどうしようもないお気楽野郎だが、どこか憎めないやつで、義人は身長百七十五センチと大柄であるが、趣味が料理と裁縫、掃除、洗濯という高校生主婦だ。そして料理研究会に所属している。
「おお、義人〜お前とは同じクラスになりたいわ〜」
そう言うと、
「オイ、俺を忘れるなよ。」
山本が言う。だから、
「お前とは別に違うクラスでもいいや。」
と冗談を言ってやる。
「ひでぇ!おい、義人、ここに人でなしがいるぞ!」
全く、単純なやつで面白い。
「まぁまぁ、違うクラスになっても僕らは友達だよ。」
「ブルータス、お前もか!」
キーキーと、世界史で習ったセリフを言う山本。ああ、こんな面白い友人たちと同じクラスになれますように、と頭の中で言ってみる。
「おーい、お前ら席につけー。このクラス最後のホームルーム始めるぞー。」
と、担任の古沢がやってきた。ああ、担任は違う先生がいいな。
「今日からお前たちは高校二年生だ。明後日には新入生も入ってくる。今までよりしっかりとした態度で過ごすように。では、この後の予定だが・・・・。」
だめだ。やっぱり眠くなる。このお堅い先生はいつも俺に催眠呪文をかけて・・・。ぐぅ。
「おーい、一貴、起きろー始業式はじまんぞー。」
「ほらほら、一貴君起きて。」
山本と義人に起こされて俺は目を覚ます。やはりと言うかなんと言うか俺は眠っていたらしい。
「全く、お前は人間の三大欲求の性欲、睡眠欲、食欲の中で睡眠欲が高すぎるんだよ。」
うるさい。お前は性欲が高すぎだ。
「ん?なんか言ったか?」
「いや、なにも?」
「ほら、二人とも、遅れちゃうよ?」
義人に促され体育館へと向かう。
出席順に一列に並ぶのが当たり前だが、この馬鹿、山本は俺の後ろにやってきて話しかけてくる。
「なぁなぁ、新しいクラスに可愛い子いるといいなぁ!」
「俺は静かに寝れるなら別にどうでもいいわ。」
「そうだよなー。一貴には美月ちゃんがいるもんなー。いいよなー。」
「なっ、バッ・・・おま、美月とはそんなんじゃねえよ!」
「分かってるって、何も言うな親友。お前の言いたいことはよく分かる。」
うんうん。と勝手にうなずく山本。
「ああ、俺にも美月ちゃんくらい可愛い彼女が欲しい・・・。」
どこか遠い目で山本が言う。
「がんばれよ、十五回ぐらい生まれ変われば三%ぐらいの確率でできるさ。」
と、ちょっと仕返しをしてやる。
「確率低い!お前見てろよ!今年中に彼女作ってやるからなぁ!」
プンスカしている山本はその後担任によってもとの位置まで連行されていった。
「美月・・・・か。」
確かに小学校のころからずっと一緒にいるし、毎日のように遊んだし、最高の異性の友達だと思う。でも、それがイコール好き、かと言われて、そうです。といえる気がしない。そんなことうじうじと考えているうちに始業式が始まる。順調に式は進む、が、最大の難関、「校長先生の話」がやってきてしまった。うちの高校の校長はとにかく話が長い。去年には、貧血で倒れた生徒もいたほどだ。しかも、話し方とかちょっと、アレである。
「はいはい、皆さん。おはようございます。んとね、新学期ってわけでね、わしの孫が今年小学校に上がるんだけどね、これがまた可愛くてね、そうそう、今年は桜も綺麗だね。そういえば隣の山田さんがね・・・・・」
あー。始まってしまった。なぜ、こんな人が校長やってられるんだろう。ほとんどの生徒が呆れ顔で校長の話をぼけーっと聞き流している。結局校長の話は二十分を過ぎたところでようやく終わった。幸い貧血で倒れた生徒はいなかった。
ようやく始業式が終わる。そしてクラス替えの表が張り出された。我先にと山本初め、元気なやつらが押し寄せる。俺はあくびをしながら眠気をこらえつつ、義人とのんびり後ろの方で人が減るのを待つ。と、山本が嬉しそうにやってきて、
「喜べ!!俺ら三人おんなじクラスだ!」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら言う。全く、その元気を分けて欲しいものだ。
「そうかそうか、義人、お前と同じクラスになれてよかったわ。」
「だから俺を忘れるなって!」
そんな他愛もない話をしているうちにようやく人の数が減り、クラス表を見れるところまでくることが出来た。やはり、山本と義人とは同じクラス。美月は・・・隣のクラスだった。他には知っている名前と知らない名前が混ざり合っている。
これが今年一年を共に過ごすクラスメイトなのだ。俺ら三人は教室へと向かう。
独特の空気が漂う教室。と、担任らしき人物がやってくる。
「はいはい。皆さん席についてね。」
確か・・・国語科の松本多恵先生だ。ちなみに今年で二十九歳の独身である。しかし、なかなか生徒は席に着かない。
「席につーいーてー?」
ニコニコと繰り返す多恵先生。だが目は笑っていない。そして未だ5〜6人の生徒は席につく気配がない。
すぅ、と息を吸い込んだ多恵先生は、突如、手を振り上げた。
と、教壇机は痛ましい音を立て見事に亀裂を走らせた。
クラス中に走った衝撃は大きく0.5秒後には全ての生徒がびしっと席についていた。
「あら、やだ、この机ぼろぼろだわ。うふふ、気にしないでね?」
背後に脅すようなオーラをたぎらせている。確かこの先生は元ヤンだったという噂が。
「はいはい、それでは自己紹介をまずしてもらいますね〜。出席順で相沢さんからね〜。」
先ほどの衝撃もあってか多少落ち着きがなかったものの相沢さんから無事自己紹介が始まった。俺は、というと、自分の番をそつなくこなし、席でポヤーンとしていた。が、ある生徒の自己紹介で目がさえた。恐らく俺以外の全員も。
「北条桜花(ほうじょうおうか)。よろしく。」
たったそれだけ言っただけだった。でもそんなことよりも、見た目が注目を浴びた。肩にかかる黒髪は左側だけちょこんとお下げにしていて、やる気無げなそれでいて愛らしい目元、etc含めかなり可愛い部類の子だった、身長は百五十センチといったところだろうか。
まぁ相当目立っていたのは事実でその後の自己紹介もあまり頭には入っていない。
自己紹介が終わると、多恵先生が自己紹介をなぜか始めた。
「はい、今年一年皆の担任を勤める松本多恵です。明るく楽しいクラスにしていきましょうね!ちなみに先生はお酒もタバコも大嫌いです!もし、そういうのやっている生徒がいたら厳しく対処しますよ?」
と、最後に多少ドスを効かせて。
大多数の生徒の脳裏に恐怖の二文字を刻み込んだホームルーム一限目はようやく終わり休憩時間となった。次のホームルームの準備のため多恵先生が職員室に戻ったため、教室のあちこちで安堵のため息が聞こえる。そんな空気の中、北条桜花だけは何事もなかったかのようにやる気無げな表情のまま読書を始めていた。分かるのはハードカバーでやたら分厚い本、ということだけだった。そしてなぜか俺はつい、興味をそそられ彼女に話しかけていた。
「北条さん・・・だっけ。何の本読んでるの?」
その問いかけに、桜花は、本から顔を上げ一貴へと視線を向けた。そして一言、
「存在論的、光子論についての考察」
突如として一貴の頭の中はクエスチョンマークが右往左往し始めた。
「お、面白い・・・・?」
「うん。」
「ど、どこらへんが?」
「ネルソンの確率量子化法によって波動係数についての」
「スマン、聞いた俺が悪かった。」
波動だの量子だの確率だのわけの分からない単語が頭を巡り、半分一貴の脳はショートしていた。
「そう。」
そう言うと桜花は読書を再開した。一貴はというとふらふらとした足取りで友人二人の待つ机へと帰還した。
「おう、どうだった一貴。」
「不思議さんだ。」
「は?」
首をかしげる友人を放っておき、机に突っ伏す。もう寝るしかない。ぐぅ。ちなみのこの僅かともいえる睡眠は二限目のため教室に戻ってきた担任、松本多恵の垂直に振り下ろされた右拳によって終わりを告げたのは言うまでもない。
ちなみに、クラス委員決めや、掃除分担などありがちな内容で二限目は終わった。
一貴は疲れ果てていた。ただでさえ普段から眠いというのに前日夜更かしをしてしまった挙句、良く分からない不思議さんに自分から絡んで脳がショートし、寝ようとした頭に痛烈な右拳が入ったのだから。ああ、五分でいい、静かな場所に行こう。
そう思い立った一貴だったが、図書室は本日休館で、トイレは男が戯れ、廊下は人ごみのよう。諦めようかと思ったがふと名案を思いつく。屋上。生徒立ち入り禁止だがまぁばれることはないし、人もくることはまずない場所だ。思い立ったが吉日、といわんばかりの勢いで屋上へと向かう一貴。次の始業まで五分は一人になれる。ああ、よきかな。
同時刻、屋上。
松本多恵は一人たたずんでいた。
「あー、かったるぃ。あの糞餓鬼共、調子乗りやがって。人が猫かぶってりゃいい気になってさ。肩もこるわ。」
そういってポケットからタバコを取り出す。咥えて火をつけ、紫煙を肺に思いっきり取り込む。プハー、と煙の残滓が吐き出された。ちなみに言っておこう。学校内は禁煙である。
ふんだ、タバコでもすわなきゃやってられっかっての。そして、また一口吸い込んだときだった。屋上のドアが開かれ、一人の男子生徒が入ってきた。藤間一貴だった。そしてこの二人の時間はリンクする。目が合った。一貴がスローモーションで巻き戻しのような動きでドアを閉め戻ろうとする。否、逃げようとする。が、多恵は早かった。人間の限界反応速度0.1秒でタバコの火を踏み消し、天使の様な笑顔を顔に貼り付け、心に般若を宿して飛んだ。いや翔んだ。そしてあっという間に一貴を捉え、
「藤間君?屋上は生徒立ち入り禁止でしょう?さぁ、先生とゆっくり生徒指導室でお話しましょう。ね?」
一貴はもう、うなずく以外の選択肢を毟り取られていた。
自習。と黒板に書かれた教室で山本浩二と相馬義人は還らぬ友人を憂い嘆いていた。しかし、当人はそんなこと知るよしもない。
三間目。生徒指導室。
入ろうとしたほかの教師でさえ、入れば絞め殺されそうな威圧感によって近づけないその指導室の中では、どす黒いオーラが具現化したような空気が満ちていた。そして、般若が、いや失礼、多恵先生が一貴に指導をしていた。いや、口止めをしていた。
「藤間君?君は今日何もみていないわね?そうよね?」
「はい、僕は多恵先生が煙草吸ってるところなんて見てません。」
両手で顔を掴まれる一貴。
「え?なあに?先生良く聞こえなかったわ?」
「僕は何も見ていないです。多恵先生は綺麗です。ごめんなさい。」
すっと手が離される。
「まぁ、綺麗だなんて。大人をからかうもんじゃありませんよ?でもまぁ、私はとっっっっっっても優しいので藤間君が屋上に行ったことは不問にしてあげます。」
一貴は泣きそうな顔で、
「あ、ありがとうございます。」
「た・だ・し、もし何か余計なことを喋ったら・・・・そう、学校から帰るときは後ろに気をつけたほうがいいわよ。なんてね!」
笑顔だった。しかし、本気の言葉にしか聞こえなかった。実際目は笑ってないし。
恐怖をこれでもかと心に塗りたくられた一貴はようやく教室に帰ることができた。同時に、本日の授業の終わりのチャイムが鳴り響いた。
肩を震わせながら、席に戻る一貴。いきなり指導されてるーとかいう声が聞こえたがもう一貴の耳にはその声は届いていなかった。そんな様子の友人を見かねて、山本と義人が一貴の様子を窺う。
「一貴、どうしたんだ?死にそうな顔してんぞ?」
「大丈夫?一貴君。これでも食べて元気出して。」
手渡された寿司二貫分ぐらいの一口おにぎりを涙ながらに食べ始める一貴。完食まで三秒かからなかった。ちなみに鮭が程よい塩加減で絶品だった。
「義人・・・お前は優しいな。俺の心配をしてくれるなんて・・・」
「ちょっとは元気でた?」
「おう・・・ありがとうな義人・・・。」
「おい、俺もいるっての。」
山本が言うが、
「何だ山本、俺にはお昼をおごってやる余裕はないぞ?」
「なに?・・・いや、じゃなくて!あーもう!」
ぐおおおお、と呻き始める山本を他所に一貴と義人は友情を確かめ合っていた。
と、一貴の背筋に寒気が走る。多恵先生が終礼のために教室にやってきたのだった。もちろんどす黒いオーラは微塵も出ていない。多恵先生は一瞬一貴を見て、ニコっとした。意味を悟った一貴はコクコクとうなずく。このやり取りは誰にも気づかれることはなかった。ただ一人、「存在論的、光子論についての考察」を読んでいた人物を除いて。
「・・・ということで、明日からは普通どおり授業が始まります。いつまでも春休み気分でいないでしゃきっとしてくださいね?明後日の予定はまた明日お話します。」
起立、礼。さようなら。という合図で生徒が続々と教室の外へ流れていく。一貴ら三人も帰ろうとした。と、
「藤間、ちょっと。」
と一貴を呼び止める声がした。声の主は、北条桜花その人だった。表情からは何を考えているのか一切読み取れない。
「なんだろ・・・。悪い、先帰っててくれ。」
早く来いよー、と山本に言われつつも桜花の元へ向かう一貴。
「俺になんか用?」
桜花は答えず辺りを見回す。まだ教室には半分ほどの生徒が残っている。
「こっち。」
そういうと、一貴の袖を引っ張りいずこかへと歩き出す桜花。一貴はただされるがまま引っ張られていく。連れてこられたのは校舎裏。辺りに人影はなくさらさらと草木が風に揺られる音だけが聞こえる。
何でこんな場所に・・・と訝る一貴。はっ・・・ここは・・・うちの学校でひそかに有名な告白ポイントじゃないか!まさかまさか・・・・ひょっとして!?一人勝手にボルテージを上げている一貴などにはお構いなしで桜花が口を開いた。完全に読み間違えている一貴はドキッとする。が、
「多恵先生と何かあったの?」
その言葉に一貴の心臓はまったく別の鼓動を繰り広げる羽目になった。
「え?え?ああ?う・・・え?」
明らかに挙動不審になった一貴を見て桜花の疑心が確信へと変わる。
「私に全て話しなさい。」
「いや、別に何もなかったってば。」
「話しなさい。」
「・・・はい。」
そして一貴はすべてゲロってしまった。今日から早速帰る時は後ろに注意しなければいけない。
「なるほど。だから教室で先生と目が合ったときあんなにキョドってたわけだ。」
「俺は一体どうしたら・・・」
「そんなことは自分で何とかしなさい。私は一貴に構っているほど暇じゃないの。」
「自分から問い詰めておいて・・・つうか、一貴って呼び捨てかよ。」
「うるさい。一貴のクセに。」
とても嫌そうな顔をされたので一貴はちょっと哀しくなった。そして追い討ちをかけるかのように、
「しかし、いい行動サンプルを見れた・・・。観察を怠らなくて良かった・・・。」
俺は虫扱いですか。そうですか。さらにシュンとなる一貴。指先で地面の砂をいじり始める。相当きている。
「というわけで、一貴にお願いがある。」
「うえ?」
ちょっと泣きべそをかきながら傷心中の一貴は顔を上げる。
「実は読みたい本が県立図書館に入ったんだが、遠いし、私一人ではなかなか時間も取れないので、一貴に借りてきて欲しいのだ。」
「え?パシリですか?」
「いやか?」
「いやです。」
「じゃあ、今日から後ろに気をつけて帰るといい。さようなら。」
「行かせて下さい。お願いします。」
こうして、不思議少女、北条桜花のパシリ、藤間一貴が誕生したのだった。
桜花に引きずられるようにして昇降口へと向かう一貴。新学期早々最悪である。靴を履き替え、そそくさと立ち去ろうとしたが、
「お昼はハンバーガーがいい。」
ということで呼び止められ、奢らされる羽目になった。一貴のお小遣いは残り1,987円になっていた。
お昼を食べるや否や、桜花はサラサラとメモを書き、
「これを借りてくるの。もちろん明日までに。」
と、言ってメモを手渡す。
メモには、「THE科学!連続体力学その1流体力学編第1章応力」と書かれていた。もちろん一貴にはまったくちんぷんかんぷんな代物である。
「はいはい・・・・。」
「はい、は一回でいい。」
「はい・・・。」
そしてやってきた県立図書館。もちろん縁のない一貴が来るのは初めてである。右往左往していると受付らしい人がやってきて、
「何かお探しでしょうか?」
と、親切に対応してくれた。一貴はポケットからメモを出して、
「これを借りたいんですが・・・。」
「はい、少々お待ち下さい。」
そういってパソコンに向かう。どうやらここの司書さんらしい。暫く待っていると検索を終えたらしい司書さんがやってきて、
「申し訳ありませんがそちらの本は只今貸し出し中でして。」
こんな本を借りるやつが北条以外にいたとは。と、驚くが驚いている場合ではない。
「あの・・・この本書店とかで売ってないですかね・・・?」
「そうですね。ジャンルが限られているので恐らく大きな書店でしか取り扱っていないと思います。」
「ありがとうございます。」
そういって図書館を去る一貴。もし見つからなければ・・・・明日から帰る時に後ろに気をつけなくてはならなくなってしまう。
そしてやってきたのは町一番の大型書店。先ほど図書館でやったように店員に聞く。
「そのジャンルの本でしたらあちらの隅のコーナーになります。」
「どうも。」
言われたコーナーで探してみるが、なかなか見当たらない。と、
「あった!」
どうにか見つけ出し喜ぶ一貴だったが、2,300円という値段が立ちはだかることになった。繰り返すが一貴は1987円しか持っていない。
「まじかよ・・・。」
仕方ない、今日は諦めよう。理由を話せばきっと分かってくれるだろうし。一貴はそう思い家路につくことにした。
本の事ばかり考えていたせいか時間が経つのを忘れていたらしい。書店を出たときにはあたりはもう茜色の夕焼けに染まっていた。でも今の一貴にはそれが恨めしく思えた。
「ただいまー。」
「お帰り。遅かったじゃない、またどこかで遊んでたの?もう高校二年生なんだからしっかりしてよね。」
帰るなり母親の説教なんてうんざりだ。俺のことを心配してくれているのは分かるがどうも素直に受け入れることができない。
階段を登って自分の部屋へと入る。自分で言うのもなんだが殺風景だ。テレビ、DVDプレイヤー、ステレオ機器、漫画、ゲーム、服。それらの物は在るが何か決定的にかけている気がしてしまう。物ではない何か。あいまいで抽象的で決して見えないそれは一貴の中でぐるぐる渦巻いていた。
「あー、もう。わけわかんねぇ。」
鞄を投げ出し、ベッドに倒れこむ。そのときだった。まるでタイミングを計ったように携帯が鳴る。
「メール?」
手馴れた操作でメールの問い合わせをする。「送信者:美月 件名:大丈夫? 本文:なんか担任の先生に注意されたみたいだね。元気がなかったって山本君や義人君に聞いたんだけど・・・。何かあったなら相談に乗るよ?」
少々心がやさぐれていた。だからなんだか些細なメールがとても嬉しく思えた。
「大丈夫、わざわざメールありがとな。」
とだけ、返す。伊達に幼馴染はやってない。意味は伝わる。だから、これだけ送ろう。メールを送信し終えると、母親が夕飯だよ、と呼ぶ声が聞こえてきた。さっさと飯食って風呂に入って今日は寝よう。色々あって疲れた。
ベッドに入ったのは午後九時半。いつもより1時間半も早い。まぁ普段も十分寝ているんだけども。横になるや一貴はすぐ寝息を立て始めた。
一貴は夢を見ていた。ぼやける。三人の人が見える。一人は美月。もう二人は霞みがかったように良く見ることができない。でも女性だということは分かった。三人は泣いていた。なぜ泣いているのかわからない。でもすごく申し訳ない気分になる。泣かないでくれ。俺がちゃんとしてれば。お願いだ。笑ってくれ。目が覚める。じっとりと嫌な汗をかいているのが分かった。目覚まし時計は深夜二時四十分を少し過ぎていた。
「何だってんだよ、畜生・・・。」
嫌な事を思い出した。小学校一年か二年のとき。
美月が泣いていた。どうして泣いていたんだろう。思い出せない。隣で俺が必死に励まそうとしている。思い出せない。俺は何を言ったのだろう。何があったのだろう。幼いころの記憶の欠片は頭の隅にこびりついたように残りなかなか寝付くことができなかった。
朝。小鳥が囀る清々しい気分をぶち壊す目覚まし時計のけたたましい音で目を覚ました俺、藤間一貴(とうまいつき)は休み中に身体に染み付いてしまった怠惰な生活の影響をさんさんと受けた新学期に相応しくない表情のまま朝食を摂り、学校へ向かうため玄関のドアを開ける。外には幼馴染の吉崎美月(よしざきみづき)がまさに春!まさに朝!という清々しく、且つ、世間一般的な男性から見れば愛くるしいといえる笑顔で、
「いっちゃん、おはよ!今日から新学期だね!」
と声高らかに手を振っている。なので俺はだらけの抜けない声で、
「おーう。」
と、片手を上げて返す。美月とは小学校時代からの腐れ縁というやつである。付き合いだけは長いものの未だ時折発生する予測不可能な思考には慣れる事ができない。まぁ時折喋り方が変わったりするがそれはもうごく自然に捉えることができるようになった。
「ねぇねぇ、私変わったの分かった?」
と、突然何の脈絡も無い質問をぶつけられるのだから此方としては心労が増すばかりである。しかし、言われて見れば、自然すぎて全く気付かなかったが背中にかかるほどあった髪が肩に届くかどうかという長さにまでカットされていた。
「髪切ったのか?」
「よく気付いたね!さすがいっちゃんだわ。どお?似合ってるかな?」
似合ってるか似合ってないか、と、問われれば、似合っているだろう。爛々と太陽のように輝く大きな瞳に、整った鼻筋、プックリとした形の良い唇、切った事で印象が変わる僅かに茶色が入った髪。客観的に見てもかなりモテる。そう、あくまで客観的に、だ。決して俺の主観ではない。・・・・・まぁ少々ドキッとしてしまったのは事実だが。さすが、今年二月時点で告白してきた男が百人を超えただけのことはある。と、同時に百人斬りも達成しているが。
「似合ってると思うぞ。」
「やだ、もう、いっちゃんてば!」
バシ!と、背中を、叩かれる。いや、すまん、訂正だ。ドゴ!と背中に裏拳が入る。うぐっ、と呻く俺などそっちのけで美月は髪の先をくるくると楽しそうにいじり出す。さすが、父親が武術家なだけはある。思い返せば小学校時代も技の練習台にされ続け、泣いていた様な思い出がある。じんわりと過去を振り返ってみるものの、なんだか絶対思い出してはならない事があったような寒気を感じてしまったのでやめておこう。とまぁ、高校で美術部に所属しながら、戦闘能力だけは上昇の一途を辿る幼馴染と学校へ向かうことにしよう。
「クラス替えでどんな人と一緒になるかなぁ?楽しみだね!」
朝からまぁ元気だなぁ、と思いつつ、
「期待してはいるっちゃいるけどな。それよりも、だ。俺には睡眠欲の方が大きい。」
はぁ、とため息をつく。
「相変わらず、眠たそうだもんねぇ。」
そんな風に笑顔で力強く言われると哀しくなってくる。と、感傷に浸っていると桜の花びらが一枚ひらひらと舞い、頬を掠めた。
「うお、桜すげ!」
と、美月が声を上げる。声につられ見上げてみると、桜並木の満開の桜が目に飛び込んできた。舞い散る桜吹雪は映画のワンシーンさながらというほど印象的な美しさがあった。そのまま桜を見ながら歩いていく。春とはいえまだ朝は冷える。でもそんな肌寒さが妙に心地いい。思わず目も覚める。これから一体どんな出会いがあるのだろうか。どんな出来事があるだろうか。高まる期待を胸に、学校の正門をくぐる。
クラス替え前の独特の雰囲気漂う教室では、あちらこちらでクラス替えについて話し合う声が聞こえる。
「いよっす、相変わらず眠そうな顔してんな一貴は。」
そう言って話しかけてきたのは一貴の友人の山本浩二(やまもとこうじ)。
「お前も相変わらず馬鹿そうな顔してるな。」
「どんな顔だよそれ!」
むぅっとしている山本は無視して席に着く。と、
「おはよう、一貴君。久しぶりだね〜。」
相馬義人(そうまよしひと)が相変わらずののほほんとした口調でやってきた。ちなみに、山本は馬鹿であほでどうしようもないお気楽野郎だが、どこか憎めないやつで、義人は身長百七十五センチと大柄であるが、趣味が料理と裁縫、掃除、洗濯という高校生主婦だ。そして料理研究会に所属している。
「おお、義人〜お前とは同じクラスになりたいわ〜」
そう言うと、
「オイ、俺を忘れるなよ。」
山本が言う。だから、
「お前とは別に違うクラスでもいいや。」
と冗談を言ってやる。
「ひでぇ!おい、義人、ここに人でなしがいるぞ!」
全く、単純なやつで面白い。
「まぁまぁ、違うクラスになっても僕らは友達だよ。」
「ブルータス、お前もか!」
キーキーと、世界史で習ったセリフを言う山本。ああ、こんな面白い友人たちと同じクラスになれますように、と頭の中で言ってみる。
「おーい、お前ら席につけー。このクラス最後のホームルーム始めるぞー。」
と、担任の古沢がやってきた。ああ、担任は違う先生がいいな。
「今日からお前たちは高校二年生だ。明後日には新入生も入ってくる。今までよりしっかりとした態度で過ごすように。では、この後の予定だが・・・・。」
だめだ。やっぱり眠くなる。このお堅い先生はいつも俺に催眠呪文をかけて・・・。ぐぅ。
「おーい、一貴、起きろー始業式はじまんぞー。」
「ほらほら、一貴君起きて。」
山本と義人に起こされて俺は目を覚ます。やはりと言うかなんと言うか俺は眠っていたらしい。
「全く、お前は人間の三大欲求の性欲、睡眠欲、食欲の中で睡眠欲が高すぎるんだよ。」
うるさい。お前は性欲が高すぎだ。
「ん?なんか言ったか?」
「いや、なにも?」
「ほら、二人とも、遅れちゃうよ?」
義人に促され体育館へと向かう。
出席順に一列に並ぶのが当たり前だが、この馬鹿、山本は俺の後ろにやってきて話しかけてくる。
「なぁなぁ、新しいクラスに可愛い子いるといいなぁ!」
「俺は静かに寝れるなら別にどうでもいいわ。」
「そうだよなー。一貴には美月ちゃんがいるもんなー。いいよなー。」
「なっ、バッ・・・おま、美月とはそんなんじゃねえよ!」
「分かってるって、何も言うな親友。お前の言いたいことはよく分かる。」
うんうん。と勝手にうなずく山本。
「ああ、俺にも美月ちゃんくらい可愛い彼女が欲しい・・・。」
どこか遠い目で山本が言う。
「がんばれよ、十五回ぐらい生まれ変われば三%ぐらいの確率でできるさ。」
と、ちょっと仕返しをしてやる。
「確率低い!お前見てろよ!今年中に彼女作ってやるからなぁ!」
プンスカしている山本はその後担任によってもとの位置まで連行されていった。
「美月・・・・か。」
確かに小学校のころからずっと一緒にいるし、毎日のように遊んだし、最高の異性の友達だと思う。でも、それがイコール好き、かと言われて、そうです。といえる気がしない。そんなことうじうじと考えているうちに始業式が始まる。順調に式は進む、が、最大の難関、「校長先生の話」がやってきてしまった。うちの高校の校長はとにかく話が長い。去年には、貧血で倒れた生徒もいたほどだ。しかも、話し方とかちょっと、アレである。
「はいはい、皆さん。おはようございます。んとね、新学期ってわけでね、わしの孫が今年小学校に上がるんだけどね、これがまた可愛くてね、そうそう、今年は桜も綺麗だね。そういえば隣の山田さんがね・・・・・」
あー。始まってしまった。なぜ、こんな人が校長やってられるんだろう。ほとんどの生徒が呆れ顔で校長の話をぼけーっと聞き流している。結局校長の話は二十分を過ぎたところでようやく終わった。幸い貧血で倒れた生徒はいなかった。
ようやく始業式が終わる。そしてクラス替えの表が張り出された。我先にと山本初め、元気なやつらが押し寄せる。俺はあくびをしながら眠気をこらえつつ、義人とのんびり後ろの方で人が減るのを待つ。と、山本が嬉しそうにやってきて、
「喜べ!!俺ら三人おんなじクラスだ!」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら言う。全く、その元気を分けて欲しいものだ。
「そうかそうか、義人、お前と同じクラスになれてよかったわ。」
「だから俺を忘れるなって!」
そんな他愛もない話をしているうちにようやく人の数が減り、クラス表を見れるところまでくることが出来た。やはり、山本と義人とは同じクラス。美月は・・・隣のクラスだった。他には知っている名前と知らない名前が混ざり合っている。
これが今年一年を共に過ごすクラスメイトなのだ。俺ら三人は教室へと向かう。
独特の空気が漂う教室。と、担任らしき人物がやってくる。
「はいはい。皆さん席についてね。」
確か・・・国語科の松本多恵先生だ。ちなみに今年で二十九歳の独身である。しかし、なかなか生徒は席に着かない。
「席につーいーてー?」
ニコニコと繰り返す多恵先生。だが目は笑っていない。そして未だ5〜6人の生徒は席につく気配がない。
すぅ、と息を吸い込んだ多恵先生は、突如、手を振り上げた。
と、教壇机は痛ましい音を立て見事に亀裂を走らせた。
クラス中に走った衝撃は大きく0.5秒後には全ての生徒がびしっと席についていた。
「あら、やだ、この机ぼろぼろだわ。うふふ、気にしないでね?」
背後に脅すようなオーラをたぎらせている。確かこの先生は元ヤンだったという噂が。
「はいはい、それでは自己紹介をまずしてもらいますね〜。出席順で相沢さんからね〜。」
先ほどの衝撃もあってか多少落ち着きがなかったものの相沢さんから無事自己紹介が始まった。俺は、というと、自分の番をそつなくこなし、席でポヤーンとしていた。が、ある生徒の自己紹介で目がさえた。恐らく俺以外の全員も。
「北条桜花(ほうじょうおうか)。よろしく。」
たったそれだけ言っただけだった。でもそんなことよりも、見た目が注目を浴びた。肩にかかる黒髪は左側だけちょこんとお下げにしていて、やる気無げなそれでいて愛らしい目元、etc含めかなり可愛い部類の子だった、身長は百五十センチといったところだろうか。
まぁ相当目立っていたのは事実でその後の自己紹介もあまり頭には入っていない。
自己紹介が終わると、多恵先生が自己紹介をなぜか始めた。
「はい、今年一年皆の担任を勤める松本多恵です。明るく楽しいクラスにしていきましょうね!ちなみに先生はお酒もタバコも大嫌いです!もし、そういうのやっている生徒がいたら厳しく対処しますよ?」
と、最後に多少ドスを効かせて。
大多数の生徒の脳裏に恐怖の二文字を刻み込んだホームルーム一限目はようやく終わり休憩時間となった。次のホームルームの準備のため多恵先生が職員室に戻ったため、教室のあちこちで安堵のため息が聞こえる。そんな空気の中、北条桜花だけは何事もなかったかのようにやる気無げな表情のまま読書を始めていた。分かるのはハードカバーでやたら分厚い本、ということだけだった。そしてなぜか俺はつい、興味をそそられ彼女に話しかけていた。
「北条さん・・・だっけ。何の本読んでるの?」
その問いかけに、桜花は、本から顔を上げ一貴へと視線を向けた。そして一言、
「存在論的、光子論についての考察」
突如として一貴の頭の中はクエスチョンマークが右往左往し始めた。
「お、面白い・・・・?」
「うん。」
「ど、どこらへんが?」
「ネルソンの確率量子化法によって波動係数についての」
「スマン、聞いた俺が悪かった。」
波動だの量子だの確率だのわけの分からない単語が頭を巡り、半分一貴の脳はショートしていた。
「そう。」
そう言うと桜花は読書を再開した。一貴はというとふらふらとした足取りで友人二人の待つ机へと帰還した。
「おう、どうだった一貴。」
「不思議さんだ。」
「は?」
首をかしげる友人を放っておき、机に突っ伏す。もう寝るしかない。ぐぅ。ちなみのこの僅かともいえる睡眠は二限目のため教室に戻ってきた担任、松本多恵の垂直に振り下ろされた右拳によって終わりを告げたのは言うまでもない。
ちなみに、クラス委員決めや、掃除分担などありがちな内容で二限目は終わった。
一貴は疲れ果てていた。ただでさえ普段から眠いというのに前日夜更かしをしてしまった挙句、良く分からない不思議さんに自分から絡んで脳がショートし、寝ようとした頭に痛烈な右拳が入ったのだから。ああ、五分でいい、静かな場所に行こう。
そう思い立った一貴だったが、図書室は本日休館で、トイレは男が戯れ、廊下は人ごみのよう。諦めようかと思ったがふと名案を思いつく。屋上。生徒立ち入り禁止だがまぁばれることはないし、人もくることはまずない場所だ。思い立ったが吉日、といわんばかりの勢いで屋上へと向かう一貴。次の始業まで五分は一人になれる。ああ、よきかな。
同時刻、屋上。
松本多恵は一人たたずんでいた。
「あー、かったるぃ。あの糞餓鬼共、調子乗りやがって。人が猫かぶってりゃいい気になってさ。肩もこるわ。」
そういってポケットからタバコを取り出す。咥えて火をつけ、紫煙を肺に思いっきり取り込む。プハー、と煙の残滓が吐き出された。ちなみに言っておこう。学校内は禁煙である。
ふんだ、タバコでもすわなきゃやってられっかっての。そして、また一口吸い込んだときだった。屋上のドアが開かれ、一人の男子生徒が入ってきた。藤間一貴だった。そしてこの二人の時間はリンクする。目が合った。一貴がスローモーションで巻き戻しのような動きでドアを閉め戻ろうとする。否、逃げようとする。が、多恵は早かった。人間の限界反応速度0.1秒でタバコの火を踏み消し、天使の様な笑顔を顔に貼り付け、心に般若を宿して飛んだ。いや翔んだ。そしてあっという間に一貴を捉え、
「藤間君?屋上は生徒立ち入り禁止でしょう?さぁ、先生とゆっくり生徒指導室でお話しましょう。ね?」
一貴はもう、うなずく以外の選択肢を毟り取られていた。
自習。と黒板に書かれた教室で山本浩二と相馬義人は還らぬ友人を憂い嘆いていた。しかし、当人はそんなこと知るよしもない。
三間目。生徒指導室。
入ろうとしたほかの教師でさえ、入れば絞め殺されそうな威圧感によって近づけないその指導室の中では、どす黒いオーラが具現化したような空気が満ちていた。そして、般若が、いや失礼、多恵先生が一貴に指導をしていた。いや、口止めをしていた。
「藤間君?君は今日何もみていないわね?そうよね?」
「はい、僕は多恵先生が煙草吸ってるところなんて見てません。」
両手で顔を掴まれる一貴。
「え?なあに?先生良く聞こえなかったわ?」
「僕は何も見ていないです。多恵先生は綺麗です。ごめんなさい。」
すっと手が離される。
「まぁ、綺麗だなんて。大人をからかうもんじゃありませんよ?でもまぁ、私はとっっっっっっても優しいので藤間君が屋上に行ったことは不問にしてあげます。」
一貴は泣きそうな顔で、
「あ、ありがとうございます。」
「た・だ・し、もし何か余計なことを喋ったら・・・・そう、学校から帰るときは後ろに気をつけたほうがいいわよ。なんてね!」
笑顔だった。しかし、本気の言葉にしか聞こえなかった。実際目は笑ってないし。
恐怖をこれでもかと心に塗りたくられた一貴はようやく教室に帰ることができた。同時に、本日の授業の終わりのチャイムが鳴り響いた。
肩を震わせながら、席に戻る一貴。いきなり指導されてるーとかいう声が聞こえたがもう一貴の耳にはその声は届いていなかった。そんな様子の友人を見かねて、山本と義人が一貴の様子を窺う。
「一貴、どうしたんだ?死にそうな顔してんぞ?」
「大丈夫?一貴君。これでも食べて元気出して。」
手渡された寿司二貫分ぐらいの一口おにぎりを涙ながらに食べ始める一貴。完食まで三秒かからなかった。ちなみに鮭が程よい塩加減で絶品だった。
「義人・・・お前は優しいな。俺の心配をしてくれるなんて・・・」
「ちょっとは元気でた?」
「おう・・・ありがとうな義人・・・。」
「おい、俺もいるっての。」
山本が言うが、
「何だ山本、俺にはお昼をおごってやる余裕はないぞ?」
「なに?・・・いや、じゃなくて!あーもう!」
ぐおおおお、と呻き始める山本を他所に一貴と義人は友情を確かめ合っていた。
と、一貴の背筋に寒気が走る。多恵先生が終礼のために教室にやってきたのだった。もちろんどす黒いオーラは微塵も出ていない。多恵先生は一瞬一貴を見て、ニコっとした。意味を悟った一貴はコクコクとうなずく。このやり取りは誰にも気づかれることはなかった。ただ一人、「存在論的、光子論についての考察」を読んでいた人物を除いて。
「・・・ということで、明日からは普通どおり授業が始まります。いつまでも春休み気分でいないでしゃきっとしてくださいね?明後日の予定はまた明日お話します。」
起立、礼。さようなら。という合図で生徒が続々と教室の外へ流れていく。一貴ら三人も帰ろうとした。と、
「藤間、ちょっと。」
と一貴を呼び止める声がした。声の主は、北条桜花その人だった。表情からは何を考えているのか一切読み取れない。
「なんだろ・・・。悪い、先帰っててくれ。」
早く来いよー、と山本に言われつつも桜花の元へ向かう一貴。
「俺になんか用?」
桜花は答えず辺りを見回す。まだ教室には半分ほどの生徒が残っている。
「こっち。」
そういうと、一貴の袖を引っ張りいずこかへと歩き出す桜花。一貴はただされるがまま引っ張られていく。連れてこられたのは校舎裏。辺りに人影はなくさらさらと草木が風に揺られる音だけが聞こえる。
何でこんな場所に・・・と訝る一貴。はっ・・・ここは・・・うちの学校でひそかに有名な告白ポイントじゃないか!まさかまさか・・・・ひょっとして!?一人勝手にボルテージを上げている一貴などにはお構いなしで桜花が口を開いた。完全に読み間違えている一貴はドキッとする。が、
「多恵先生と何かあったの?」
その言葉に一貴の心臓はまったく別の鼓動を繰り広げる羽目になった。
「え?え?ああ?う・・・え?」
明らかに挙動不審になった一貴を見て桜花の疑心が確信へと変わる。
「私に全て話しなさい。」
「いや、別に何もなかったってば。」
「話しなさい。」
「・・・はい。」
そして一貴はすべてゲロってしまった。今日から早速帰る時は後ろに注意しなければいけない。
「なるほど。だから教室で先生と目が合ったときあんなにキョドってたわけだ。」
「俺は一体どうしたら・・・」
「そんなことは自分で何とかしなさい。私は一貴に構っているほど暇じゃないの。」
「自分から問い詰めておいて・・・つうか、一貴って呼び捨てかよ。」
「うるさい。一貴のクセに。」
とても嫌そうな顔をされたので一貴はちょっと哀しくなった。そして追い討ちをかけるかのように、
「しかし、いい行動サンプルを見れた・・・。観察を怠らなくて良かった・・・。」
俺は虫扱いですか。そうですか。さらにシュンとなる一貴。指先で地面の砂をいじり始める。相当きている。
「というわけで、一貴にお願いがある。」
「うえ?」
ちょっと泣きべそをかきながら傷心中の一貴は顔を上げる。
「実は読みたい本が県立図書館に入ったんだが、遠いし、私一人ではなかなか時間も取れないので、一貴に借りてきて欲しいのだ。」
「え?パシリですか?」
「いやか?」
「いやです。」
「じゃあ、今日から後ろに気をつけて帰るといい。さようなら。」
「行かせて下さい。お願いします。」
こうして、不思議少女、北条桜花のパシリ、藤間一貴が誕生したのだった。
桜花に引きずられるようにして昇降口へと向かう一貴。新学期早々最悪である。靴を履き替え、そそくさと立ち去ろうとしたが、
「お昼はハンバーガーがいい。」
ということで呼び止められ、奢らされる羽目になった。一貴のお小遣いは残り1,987円になっていた。
お昼を食べるや否や、桜花はサラサラとメモを書き、
「これを借りてくるの。もちろん明日までに。」
と、言ってメモを手渡す。
メモには、「THE科学!連続体力学その1流体力学編第1章応力」と書かれていた。もちろん一貴にはまったくちんぷんかんぷんな代物である。
「はいはい・・・・。」
「はい、は一回でいい。」
「はい・・・。」
そしてやってきた県立図書館。もちろん縁のない一貴が来るのは初めてである。右往左往していると受付らしい人がやってきて、
「何かお探しでしょうか?」
と、親切に対応してくれた。一貴はポケットからメモを出して、
「これを借りたいんですが・・・。」
「はい、少々お待ち下さい。」
そういってパソコンに向かう。どうやらここの司書さんらしい。暫く待っていると検索を終えたらしい司書さんがやってきて、
「申し訳ありませんがそちらの本は只今貸し出し中でして。」
こんな本を借りるやつが北条以外にいたとは。と、驚くが驚いている場合ではない。
「あの・・・この本書店とかで売ってないですかね・・・?」
「そうですね。ジャンルが限られているので恐らく大きな書店でしか取り扱っていないと思います。」
「ありがとうございます。」
そういって図書館を去る一貴。もし見つからなければ・・・・明日から帰る時に後ろに気をつけなくてはならなくなってしまう。
そしてやってきたのは町一番の大型書店。先ほど図書館でやったように店員に聞く。
「そのジャンルの本でしたらあちらの隅のコーナーになります。」
「どうも。」
言われたコーナーで探してみるが、なかなか見当たらない。と、
「あった!」
どうにか見つけ出し喜ぶ一貴だったが、2,300円という値段が立ちはだかることになった。繰り返すが一貴は1987円しか持っていない。
「まじかよ・・・。」
仕方ない、今日は諦めよう。理由を話せばきっと分かってくれるだろうし。一貴はそう思い家路につくことにした。
本の事ばかり考えていたせいか時間が経つのを忘れていたらしい。書店を出たときにはあたりはもう茜色の夕焼けに染まっていた。でも今の一貴にはそれが恨めしく思えた。
「ただいまー。」
「お帰り。遅かったじゃない、またどこかで遊んでたの?もう高校二年生なんだからしっかりしてよね。」
帰るなり母親の説教なんてうんざりだ。俺のことを心配してくれているのは分かるがどうも素直に受け入れることができない。
階段を登って自分の部屋へと入る。自分で言うのもなんだが殺風景だ。テレビ、DVDプレイヤー、ステレオ機器、漫画、ゲーム、服。それらの物は在るが何か決定的にかけている気がしてしまう。物ではない何か。あいまいで抽象的で決して見えないそれは一貴の中でぐるぐる渦巻いていた。
「あー、もう。わけわかんねぇ。」
鞄を投げ出し、ベッドに倒れこむ。そのときだった。まるでタイミングを計ったように携帯が鳴る。
「メール?」
手馴れた操作でメールの問い合わせをする。「送信者:美月 件名:大丈夫? 本文:なんか担任の先生に注意されたみたいだね。元気がなかったって山本君や義人君に聞いたんだけど・・・。何かあったなら相談に乗るよ?」
少々心がやさぐれていた。だからなんだか些細なメールがとても嬉しく思えた。
「大丈夫、わざわざメールありがとな。」
とだけ、返す。伊達に幼馴染はやってない。意味は伝わる。だから、これだけ送ろう。メールを送信し終えると、母親が夕飯だよ、と呼ぶ声が聞こえてきた。さっさと飯食って風呂に入って今日は寝よう。色々あって疲れた。
ベッドに入ったのは午後九時半。いつもより1時間半も早い。まぁ普段も十分寝ているんだけども。横になるや一貴はすぐ寝息を立て始めた。
一貴は夢を見ていた。ぼやける。三人の人が見える。一人は美月。もう二人は霞みがかったように良く見ることができない。でも女性だということは分かった。三人は泣いていた。なぜ泣いているのかわからない。でもすごく申し訳ない気分になる。泣かないでくれ。俺がちゃんとしてれば。お願いだ。笑ってくれ。目が覚める。じっとりと嫌な汗をかいているのが分かった。目覚まし時計は深夜二時四十分を少し過ぎていた。
「何だってんだよ、畜生・・・。」
嫌な事を思い出した。小学校一年か二年のとき。
美月が泣いていた。どうして泣いていたんだろう。思い出せない。隣で俺が必死に励まそうとしている。思い出せない。俺は何を言ったのだろう。何があったのだろう。幼いころの記憶の欠片は頭の隅にこびりついたように残りなかなか寝付くことができなかった。
2008.06.18 ▲
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